一言でいえば「お客様のお役に立つこと」が税理士の仕事と言えるでしょう。
税理士法1条は、税理士の仕事すなわち使命を「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と規定しています。
法律の条文の読み方は、各税理士の立場によって異なりますが、私は「大量かつ煩雑すぎて国家が直接行うことが出来ない税金の申告納税手続を、納税者の皆様のお役に立ちながら、納税者の皆様が適正に履行して頂けるようにお手伝いするのが税理士の仕事である。」と読めると、現時点では考えております。
次に「お役に立つ」ためにはどうずれば良いかと考えると、「お客様から承ったご相談には、基本的に全て対応する」のがお役に立つことであるという思考に至ります。
なぜなら、社外の人間のうち、税理士ほど中小零細企業の社長様方の近くにいる存在は、他に無いからです。
そして意外かもしれませんが、ご相談の多くは、本来の私の業務範囲を超えたもので、本当に私は「全て対応」しないといけないのです。
もちろんこれらの全てを私が解決出来るはすはありません。
その場合、内容によっては税理士という私の立場でアドバイスすること自体が法律違反になることもありますので、しかるべき専門家や公共機関をご紹介いたします。
しかし、そこまでの必要があるかどうかもよく分からない、或いはそもそもその分野には専門家がいないというケースも多々あります。
そういうときは、仕事、勉強、プライベートに関係なく、これまでに得た知識と経験を総動員して、私なりに「当りをつける」という発想で対応しております。
つまり、世の中、古今東西、人の考えることにそんなに変わりはないはずですから、大抵のことは、全く違う分野のことであっても、類似した思考パターンがあるはずです。
お客様からの発言や私からの質問の回答を組み合わせながら、私が知る範囲ではあるものの、どの知識の組み合わせが使えそうか、或いはご相談内容に関連して、まだお客様が気付いていない他の問題が生じる可能性はないか、その場で必死に考えるのです。
そうすると、解決までは出来なくとも、論点がはっきりして専門家への橋渡しがスムーズに行く、或いは解決の方向性だけは見えてくるといったことが、よくあるものです。
「税理士の仕事」をもっと抽象化して定義するならば、「頭の中の『縦割り行政』を取り外して、横断的な思考をすること自体が税理士の仕事である。」と言えるのかもしれません。